絶望の海岸⑨

鼻たれとっても、ほっとかれれんぞ。
(訳:鼻水が垂れていても、ほうっておかれるのだよ。)

マスクもせんと、
(訳:マスクもしないで、)

外国から来た資材を覆っている有毒カビの舞う空気に、
無防備なままの鼻腔をさらしたまま、

夏は雨、冬は雪の降る中、

作業服、
店で売っとる、一番安いやつや、

それを大事に、
普通の洗剤で洗ってもとれない油性の汚れがついても、
擦り切れても、穴があいても、つぎあてして、使って。

その作業着の上から、

灰色の海と空よりも、もっと暗い色のカッパ。
そうして作業すると、
汗は乾燥せんと、蒸されて、暑くて、冷たい。

100kgのもんでも、一人ではこばんなんげんぞ。
(訳:100kgの物であっても、一人で運ばないといけないのだよ。)

カビのせいで、鼻ん中に、ぶつぶつできたら、病院でとらんなんげんぞ。
(訳:病院でとらないといけないのだよ)

「有名な先生に紹介状を書いてあげます」

静脈麻酔で眠っていて暴れたりしないはずの患者への
胃カメラの挿入で、
患者の喉に傷を付けるくらい手先も頭もレベルの低い医師が、

「有名な先生」?

そのぶつぶつの、臭いにおいが、喉に落ちた。

静脈麻酔はするな。
橈骨茎状突起から5センチ肘寄りの腕甲側に神経がある。
そこに麻酔を打つというバカなミスをする病院スタッフのせいで、
手しびれらん一生消えんくなるぞ。
(訳:手のしびれるのが)

楽器弾けんくなるぞ。
もうベース一生弾けんげわ。
(訳:もうベースは一生弾けないのだよ。)

***

海まで車で5分、自転車では10分の、
夜、「コォー」という海鳴り(うみなり。←波の音を指す)
が聞こえる、私たちが住む村のすぐそばに、

「原子力発電所(げんしりょくはつでんしょ)」、
という建物(小学生だった私は、それまで聞いたことも無かった)、
(一般的には、「原発」「げんぱつ」と呼ばれている)

が、できた時、その人は、
とても、不思議な目をしていました。

そして、 わたしに、こう言いました。

「大人になったら、ここからは、出て行けや。
東京のど真ん中へ行け。
そして、一生、ここには帰ってくるな。わしの葬式でもやぞ。
(訳:わしの葬式の時も帰ってくるな)

原発から金もろて(訳:お金をもらって)、
原発のそばに家建てても、

おまえが被爆したら、わしは悲しいからやぞ。
お前が嫌いやからこんなことゆうんじゃないげんぞ。
(訳:こんなこと言うのではないのだよ。)

お前が大事やから、言うげんぞ。
(訳:おまえが大事だから、言うのだよ。)

夏、田んぼで汗こだら(訳:汗だく)になって作業した後、
ちったーい(訳:冷たい)***(特産物名)、
うんまいやろ?(訳:おいしいでしょう?)

雪ふっとって畑いかれんとき(訳:雪が降っていて畑に行けないとき)、
みんなで皮むいて作った***(特産物名)も、

おまえは、
他の米を食べたことが無いからまだ分からんやろうけど、
今作って食べとる、この、

無農薬有機栽培天日干しの、この味の米も
ここで作ったもんは、ぜんぶ、
もう、二度と食べれんくなるぞ。
(訳:食べれなくなるぞ。)

おまえが将来、
精米された白い米を買ったり、

大都会のレストランに、
大学の友達や、職場の人と一緒に行って、
皿にのったごはんが出てきたとき、

味が、今食べとる米と違っても、
変な顔したら絶対だめやぞ。
なんもゆわんと、食べるげんぞ。
(訳:何も言わずに、食べなさいね。)

米にも、色々な味があるげんぞ。

この美しい田園風景全体が、
春の、水を張った、足の裏にやわらかい泥を感じながらの田植え、
夏の、目の覚める青い、新しい、匂い、さらさらと風になびくさわやかな音、
秋の、台風をなんとかかわして倒れないでがんばった、金色の宝石のような実り、
冬の、氷が張って、長靴の底にパリパリと小気味良い田んぼ、
キラキラしていて、踏むと、ごりっ!ごりっ!と音がする霜柱、

その美しさを保ったまま、
物理的には存在しとるまま(訳:存在しているまま)、

将来、
ここは、
ここから半径60kmより遠いとこに住んどるもんらちの、
(訳:遠いところに住んでいる人たちの、)
頭の中の地図から、
永遠に、消えれんぞ。
(訳:消えるのだよ)

でも、それは、ここに住んどるもんらちが、
自分らで選んだ将来や。

多数決で決まったから、反対しとったもんらちがかわいそうや、
というのは、間違った考えや。

多数決で決まる、という仕組みをかえなかったから、決まってんぞ。

既存の仕組みをかえる、という、
大部分の人、特に年寄りの大部分や。
そいつらに疎まれる行動をすると、

ここに限らず、世界中のどこででも、ほとんどの場合、
村八分(むらはちぶ。←仲間はずれ)になって、疎まれる。

昔、偉いもんが、天然痘の治療をしたときも、そうや。
その治療をして、命を救う、という行動でさえも、疎まれることがある。

エボラ出血熱の治療でも、そうや。
「治療をして、命を救う」という行動でも、
「その土地や、その分野に、これまで存在しなかった行動・手段」である以上、

村八分になることは、ほぼ、避けられん。

特に、

①学歴がないもんがする、「既存の仕組みをかえる」という行動

は、

②東京大学理科3類(東大医学部)、
日本でいちばん頭のいいもんらちが行くとこや、
そこに入学して卒業したもんがする、「既存の仕組みをかえる」という行動

とは、別のもんとして、周囲から認識される。

①は、村八分になって、
②は、賞賛される。

その2者の行動が同じでも、や。
さらに言うと、
①が論理的に正しくて、②が論理的に間違っていても、や。

おまえが、一番簡単なやり方で、
世界、少なくとも、日本を変えたいなら、
最低でも東大医学部に入学したもん、という肩書きが必要や。

しかし、わしは、
おまえの東大医学部受験のための準備に必要な金は、やれん。
(訳:あげることはできない)

ほうやし、
(訳:なので)
ここからは、なんもしてやれん、口ばっかりの、
(訳:何もしてあげることが出来ない、指図だけしかできない、)
年寄りの戯言やと思って、よかったら聞いてくれ。
少しでも嫌やと思ったら、忘れれや。
(訳:忘れなさいね。)

おまえは、
自分で稼いだ金で、
東大理3に合格するために必要な、入試で取るべき点数を調べて、
その点数をとれるようになるために必要な本を買って、
塾へは行かずに家で勉強せえ。

並行して、
・2016年4月入学者選抜用の東大理3募集要項を取り寄せて、
試験実施時に受けられる配慮や、必要科目を確認せえや。
・2016年1月実施のセンター試験申込要項を取り寄せて、
試験実施時に受けられる配慮を確認して、試験申し込み手続きをせえや。
・2016年1月、センターを受けたあと、東大理3に出願せえや。
・2016年2月、東大理3の受験票を持って2次試験を受けえや。
・2016年3月、東大理3の合格通知が届いたら、
入学手続き書類に学費減免制度が無いか確かめえや。

医学部生だけが借りれる奨学金もがあるかもしれん。
ただ、無利子奨学金や、医学部生限定の奨学金も、
おそらく連帯保証人が居ないと借りられない。
わしはその頃、たぶんもう死んでいるから、連帯保証人にはなれん。

(話がそれるが、そもそも連帯保証人というのは、
連帯保証人名義欄に署名押印した、その紙に書いてあるお金を、
お金を借りた本人に代わって確実に払える人しか、なってはいけないものなんや。
だから、自分はお金に余裕がないと思う人は、簡単になってはいけない。)

話を戻す。
給付型で、保証人が居なくてももらえる奨学金もあるかもしれない。
入学後、東京大学内の、学務課や学生サービス課といったところに聞けば、
もっとそういう制度があることを教えてくれる可能性もある。

それに、
時間を切り売りしないでお金を稼ぐことが出来る仕事も、
もしかしたら、あるかもしれない。

どうすれば、
東大医学部に入学して卒業できるかを、
おまえが、自分で、考えろ。
必ず、その方法にたどり着ける
おまえには、頭という武器があるからや。

15年後、どこかの学校の先生が、そのどこかの生徒に言う言葉は、180度変わる。

だから、今の学校の先生が、おまえに言う言葉が、
もし、おまえの人格や行動を否定するような内容だった場合、
その先生の言うことは、絶対に聞くな。
学校の先生は、
「先生である自分よりも頭の良い生徒」に何かを教えることはできないからな。

おまえは、2016年3月までのあるとき、
10円玉をたくさん財布につめて、
3回、それぞれ別の番号へ、公衆電話から、電話をかける。

そして、簡単に、気づく。

誰も作ることが出来なかった「ある薬」を作る方法に。

その薬は、治療法が存在しないある病気の特効薬や。
その、ある病気の人類史上1人目の患者は、早ければ2016年4月に出現する。
以降、その病気(ウィルス)は、人類のみを猛スピードで駆逐する。

ただ、
その特効薬は、どこででも、おまえなら簡単に作ることが出来る。
たとえ、「東大医学部に入学して卒業」をしていなくとも、作れる。お前なら。

でもな、
①学歴がないもんが作った薬は、おまえ以外、誰にも飲ませることはできない。
②おまえが東大医学部へ入学して、その薬を作ったら、生きたいやつは、皆その薬を飲むだろう。

選ぶのは、おまえや。

sponsored link

このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年1月21日 絶望の海岸⑨ はコメントを受け付けていません。 絶望の海岸