ある駅で途中下車してみたら,廃墟になった遊園地があった話

半年前,50代にさしかかった叔父(おじ)が、末期肺がん、あと半年。
と言われて,
医師の予想通り,ぴったり半年後の先日、死んだ。

最後に会った半年前、いつも通りの笑顔だった。

つぎに病院に行ったら,面会謝絶だった。
葬式は,呼ばれていない。

***

わたしは今日,廃墟になった遊園地を、見た。
私の故郷から今住んでいるアパートまで,特急列車で数時間。
初めて,ある駅で、途中下車した。

170cm近くある私の背より高い柵に囲われた、
外側が白で内側が赤の,カボチャ型の馬車。
金色のたてがみの、つるんとした白馬の青い目。
永遠に見開かれたまま。楽しそうな目のまま。
たくさんの、見開かれたままの、作られたままの、笑った目。
サーカスのテントみたいな,上にある覆いのおかげで,
雨にはあまりあたっていないようだった。
白馬達は,きれいだった。
そこの入り口には、たぶん、”Merry go round” と、
英字の筆記体で書かれていた。
ほとんどはげていて、何色だったのかは分からなかった。

15個くらいの錆びたゴンドラがぶら下がった、観覧車。
白,青,オレンジ,ピンク,黄緑…。
それぞれ、太陽のせいなのか、色あせていた。

全部動かないみたいだ。きっと、もう二度と。

その、廃墟の遊園地添いの道。
何十年も前、
少なくとも私の年齢以上も前に植えられたと分かる年輪が見えた。
断面。
その木の根、アスファルトを盛り上げて,割ってた。
放射線のひび割れが,切り株の数だけあった。

熱いアスファルトが,どれだけ嫌だっただろう。
体を足首だけ残されて,切断されて,殺されるのは,どういう気持ちだったのだろう。
植物は,痛覚が無いの?

廃墟の遊園地。
シャッター街。
通り過ぎるのは,タバコを吸いながら自転車に乗る人と、
少し太った,ウォーキング?のトレーニング中の人と、
町から買い物を終えて戻ってきたのだろうか、
紙袋を下げた,まだ高校生みたいな子達。

駅への帰り道。
おばあさん2人の、うわさ話だけが、響いていた。
私が横を通ると,声をひそめた。
遠ざかると,また、話をはじめた。

夕暮れ。
あたりには、居酒屋とカラオケの灯りだけがついていた。
演歌らしき歌が、少し聞こえてきた。
女の人の笑い声も。

おじさんとおばさんが、
近くに子どもたちが居るところで、チューとか、なにかをしていた。
わたしは、それをみて、
いつも通り,気持ち悪いと思った。
大都会で見ても同じように,いつも気持ち悪いと思う。
年を重ねているからと言って,必ずしも,
TPOの知能も増すとは限らないなんてわかっていることなのに。
子どもたちが見ている前で、そういうことをする大人は、
もしかしたら、なにかの被害者なのかもしれない。
だから、配慮が出来ないのかもしれない。
それか、そういうことは普通で、
わたしにスルースキルが足りないだけ?

タバコの自販機が,あった。
わたしは、いつも、
一番安いあのタバコがあるか,確認してしまう。
昔,じいちゃんのポケットに、入ってたやつ。
ウイスキーの日本酒割りが入った大きなコップが
夕方、母屋に行ったときは、いつもそばにあった。

廃墟の遊園地が老人ホームの横にあったその街にも,
高校生か中学生の、仲の良さそうな男女が、居た。
公園の遊具のそばで,抱き合っていた。
もしかしたら、交際?しているのかもしれない。
会話内容が,聞こえてきた。
(聞き耳を立ててたわけじゃない!聞こえてきたんだ!)
標準語では,無かった。
(わたしの故郷の方言とは違う種類の、
特徴のある方言だった)

10年ほど前,当時の私と、
当時、一生一緒に居れたらいいなと思っていた人、
2人の残像。
あの頃の二人を見ていた、無関係の人が居たとして,
その人が今の私と同じ歳の人だったら,
私が感じた感情と同じ感情を感じるかもしれない。
その感情は、
公園の遊具で遊ぶ保育園児くらいの子ども達を見るような、
微笑ましい光景を見ているときのような、温かい感情だ。
もし、二人が人前でチューや何かをしていたとしても。

そして、わたし自身,高校生、
いや、20歳を超えている男の人でも、
歳が下すぎる人からは、男の人としての魅力は、
まったく感じられない。
子どもを見るような感じだ。

(私が高校生の頃,私に性的暴力をして交際を迫った、
やがて30歳になろうかという年頃だった、
あのデブでキモかったおじさんは,
やっぱり頭がおかしかったんだと思う。
そして、
そのおじさんは、
きっと同年代女性に相手にされなかったんだと思う。)

故郷の、高校ちかくの、ポストがある公園の近く。
帰省した時,いつも、そこに、高校生の2人が見えた。残像。
私は赤いコートを着て,向こうは黒いコートを着てた。
私は,500円のコートを着てた。
向こうは,きっと5000円以上するコートを着てた。
その人からされた暴力も、いつも、一緒に思い出した。
(デブでキモいおじさんからの交際の強要は、
その同級生が、依頼したことだったのかもしれない。
兄貴分だったみたかったから。)

***

この週末で、
私は故郷に、もう二度と帰らないことを決めた。
親の葬式であっても。

完璧に捨ててきた。
残像も全て、消してきた。
両親への、こんな両親だったら良かったな,という思いや,
いろんな人からされた暴力も、すべて,捨ててきた。

私の故郷という、絶望の廃墟に。

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