あなたはデパスという薬を知っていますか?
デパス1mgを20錠一気飲みして、ねむ子や!
いつかの私。
わたしは医者ではないので、ただの体験談。
当時親しかった人につれられて、病院に行った。
はじめてデパスを飲んだ。
飲んで20分後くらいに、歩いて外に出た。
自転車に乗ったその人が、歩く私よりすこし早く、横断歩道をわたった。
地面が少しゆらゆらして、背中が少しゆらゆらした。
ゆらゆらしていたのは私の頭だった。
ゆらゆらは、一時間くらいしたら、おさまった。
それからしばらくして、その人とは、
会うのもやめて、連絡を取るのもやめた。
なぜだか、めっちゃ嫌いになったから。
私の性格が変わっていったような気がした。
その人はたぶん全然変わってなかった。
それから、周りの人全員が怖くなった、瞬間、
1錠飲んでも2錠飲んでもダメで、
止まらなくなって、
20錠飲んでしまった。
家まで送って行ってあげようか?と優しい言葉をかけてくれたひとに、
あなたなんかには送られたくない、みたいな、
たぶんもっとひどい言葉で答えた。
それまでカラオケほとんど行ったことなかったんやけど、
突然、一人カラオケに出かけた。
高校生みたいな人らがたくさんいたけど、
顔がなかった。
全員、顔がただの肌色の固まりで、目や鼻や口がなかった。
それから、行ったことのなかった和菓子屋さんに行って
(黒みつがかかった団子を売ってる店)
8本くらい入ったのを買った。
団子を食べていたら後輩が来たので、一緒に食べた。
後輩の顔はあった。
夜、友達とごはんを食べに行った。
店に着いたあたりから記憶が断片的になっていった。
気づいたら、店の横の、赤い階段の上に、友達と並んで座ってた。
私の膝の間に、Vittelというラベルの赤いキャップのミネラルウォーターがあった。
その後、なんとか家まで帰ったらしい。
夜があけたら、しっかりお風呂も入って歯磨きもして布団の中で眠った私がいた。
起きたら、フラフラした感じもなくて、
頭やおなかが痛いことも無かった。
体がだるいことも無かった。
まるで夢だったみたいに、20錠の痕跡は、ひとつもなかった。
これが、20錠でもためらわなくなった理由だったのかもな。
思考からの逃げ場。